ロルフィング®では、重力と調和したからだを実現するために様々なテクニックを用いますが、そのうちの1つが「筋膜」のリバランスです。
筋膜とはからだの結合組織の1つで、「筋肉を覆っている膜」と思われがちですが、実際は筋肉だけでなく皮膚の深層・骨・内臓・毛細血管・脳にいたるまで全身をくまなく包んでいます。
果物のミカンをイメージしてみましょう。
粒の1つ1つが薄い皮で覆われています。それらが集まってさらに厚い側で覆われ、1つの房となります。さらに房同士が繋がって球体になり、分厚い皮に包まれて、1つのミカンになります。
このミカンの皮のように、筋膜は全身を繋いでいます。人体からこの膜だけを取り出しても3Dのボディスーツのように人の形になるため、筋膜は「第二の骨格」とも呼ばれます。
次に、サッカーゴールのネットを思い出してください。
ネットの1つ1つのマスが正方形になっているとして、ネットの端を引っぱると掴んだところの正方形がゆがんで平行四辺形になります。またその隣のマスも平行四辺形になります。さらにその隣も・・・ということで、引っぱったところから一番遠くのマスも、やはり少し平行四辺形になりますよね?同じように、ケガや日常の動作・姿勢のクセで筋膜のどこかに偏りができると、全身にその影響が波及します。
逆に、引っぱっている指を離すと、ネットのマスはすべて正方形に戻ります。同様に、ある場所の筋膜の癒着が解放されると、直接施術していない部位にも変化が起こります。
筋膜の偏りが長期にわたって持続すると、手を離しただけでは元に戻らなくなります。筋膜が硬くなるとまるで小さいサイズの服を着たときのように呼吸や動作を制限し、逆にゆるすぎると、大きすぎる服を着たときのように動きにくくなります。
ロルフィングでは全身の筋膜の繋がりをみて硬いところはリリースし、ゆるすぎるところは張りを回復して、適切なテンションにしていきます。
私たちは、楽しみな用事があると足取りが軽くなったり、落胆するとガックリと肩を落としたりします。また、好きな香りをイメージしながら歩いてもらうと、多くの人は、胸が自然に開いて動作がいきいきしてきます。
からだと心は切り離せないものです。からだは、様々な器官で構成された”乗り物”でありながら、その人のこころや知覚の表現でもあるのです。
ロルフィング®はカウンセリングやサイコセラピーではありませんが、知覚(五感など)がからだに及ぼす影響も重視しているため、身体的変化を通じて心理的変化も感じる方もいます。
姿勢と動き(動作)は、相互に影響しあっています。
”動作”の前には必ず”姿勢”があり、そのどちらにも、その人の身体的な要素だけでなく、心理的要素や価値観も表れています。
同じイスに座っているだけでも、その姿勢によってそこから生まれる動きやそのスピードが異なります。そのため、ロルフィング®では、姿勢を”動きの可能性”とみなします。
また、特定のしぐさを繰り返すことで、姿勢として定着する場合もあります。
緊張すると自分を大きく見せようと肩をいからせる人もいれば、萎縮して背中を丸める人もいます。私たちが今まで生きてきた中でどんな動作・態度を選択してきたのか、それが蓄積したのが姿勢です。姿勢には、その人の生きてきた歴史、文化、価値観、癖、物事のとらえ方、感情が表れているのです。
”動くこと=生きること”です(Life is movement)。
からだは動くためにデザインされています。
話をする時に身ぶり手ぶりの多い民族もいれば少ない民族もいます(文化的影響)。また、同じ物を渡す、という動作でも、相手や状況によって動きが違ってきます(心理的影響)。
動作も、必ずその人の価値観・心情的要素・ボディイメージを反映しています。
動きを変えるには姿勢が変わる必要があり、姿勢が変わるには、知覚(ものの捉え方)が変わる必要があります。
これらの変化は一瞬で起こる場合もあれば、ゆっくり変化することもあります。
先に身体的な変化が起こり、その結果知覚が変わることもあります。
また、それがどんなによい姿勢であっても、長時間続けるようにからだはできていません。からだは、動くためにあるからです。